お知らせ 2023.12.15

【追悼記事】 越野滋夫氏を偲ぶ

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2023年12月2日、日本展示会協会 会長だった越野滋夫氏が急逝されました。
以下は、長年にわたり親交の深かった於久田幸雄氏(パラボックス㈱ / ㈱MICEジャパン)が 『MICE Japan』 2024年1月号に寄せた追悼記事をもとに制作したものです。

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展示会開催を常にサポートしてくれた生涯最高の先輩
日本展示会協会 会長 越野滋夫 氏を偲ぶ
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於久田幸雄
パラボックス㈱代表/㈱MICEジャパン シニアアドバイザー
越野滋夫 日本展示会協会(日展協)会長が令和5年12月2日に急逝した。享年75歳だった。そのあまりにも突然の訃報から1週間ほど経った今でも信じられない気持ちが頭を巡り、その現実を受け止めることができない。

越野さんは、日本包装技術協会(JPI)アドバイザー(前専務理事)で、日本マテリアル・ハンドリング(MH)協会 専務理事も務めていた。日展協の会長に推されて就任したのは今年の6月である。半年も経たずに他界されるというのは、あまりにも早すぎる。これからの展示会発展に貢献していかなければならない立場だっただけに、悔しさが残る。その思いは私だけではなく、業界全体、ひいては越野さんご自身もそう感じているはずである。

私が越野さんとはじめてお会いしたのは今から36、37年前の1986年頃だったと思う。当時『東京トラックショー』の主催運営総責任者として奔走していた私は、包装技術も物流の重要なファクターと考え、『東京パック』を主催するJPIを訪ねた。越野さんは1978年にJPI入職、初めてお会いした時の役職はおそらく係長か課長だったと思う。展示会運営の大先輩だった越野さんに対して唐突に出展協力して欲しいと切り出したとき、越野さんはその優しく柔らかな物腰で「検討しましょう、頑張ってね」と応じてくれた。それから、展示会を通じてのお付き合いが始まった。

お酒を殆ど飲まない越野さんだが事あるごとに「飲みに行きましょう」と誘ってくれた。特に親しくなったのは越野さんがJPIの理事・事務局長となった2012年で、物流関係者が集まりタイとインドネシアを訪問する視察団を組む際にそのコーディネーターをやって欲しいと頼まれたことからだった。海外での展示会開催についても何かと越野さんに相談するようになったが、私がタイで開催に漕ぎつけた『タイ国際トラックショー』に理解を示し、JPIが中心となって日本パビリオンもとりまとめてくれた。2018年にJPIの専務理事となり多忙を極めていた越野さんだったが、私の話に常に耳を傾け、海外開催の苦労についても相談に乗ってくれた。それを考えると感謝の気持ちが溢れ出す。

MH協会の専務理事として、タイにおける物流人材育成を目的にタイの王立モンクット大学とタイアップして教育事業をスタートさせたのも越野さんの大きな功績だった。収益事業にはならないが、タイの若手物流人材のスキルを上げることは結果として日本の物流業界に必ずメリットをもたらす、と越野さんは語っていた。私もタイのネットワークを利用してその教育事業に協力させてもらっていた。

肺に影が見つかったのは10月の上旬頃で、その検診結果を電話で聞かされ愕然とした。しかし越野さんは元気で10月25日には上野で夕食を共にした。今となってはそれが越野さんに会う最後となった。

11月になってからも入院中の越野さんと長電話をしたことがあったが、その時は「大丈夫、必ず完治して復活できますから」などと話をしていた。それを信じていた。それがこのような結果を招くとはあまりにも悲しい。

LINEで送るメッセージが既読にならなくなっていた。連絡が途絶えたことを心配していたところ、12月2日土曜日の午後8時過ぎ、越野さんが亡くなったとの連絡が奥様から日展協の佐々木事務局長に入った。佐々木さんがすぐに伝えてくれたが、現実が飲み込めず「何をバカな」と思うばかりだった。

一刻も早く越野さんに会いたいと思ったが、翌日の12月3日は越野さんの奥様も娘さんもあわただしく、駆け付けるのを控えざるを得なかった。そして12月4日月曜日の朝、佐々木さんと共に特急に乗り込み越野さんが住む土浦に向かった。越野さんは穏やかな顔をされていた。奥様と娘さんに話を聞くと、2週間ほどで転げ落ちるように容体が悪くなり越野さんは急速に自由を失っていったとのこと。苦しむことなく眠りにつくような最期だったらしい。

私にとって越野さんは、仕事仲間であり、大先輩であり、大切な友人でもあった。越野さんがいなくなった現実をまだ理解できていない。
越野滋夫氏(2022年)

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APF会長からAwardの賞状を受け取る(2019年)

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